再び、コジモ大公の次の世代、フランチェスコ1世(とビアンカ・カペッロ)の死後、トスカーナ大公となったフェルディナンド1世に話を戻します。
フェルディナンドは、マレンマ地方の農耕開拓、リヴォルノの港町としての発展、サラセン人や海賊により荒らされていた地中海の海運の統治(それによる東方との貿易の活発化)、などに成功し、トスカーナに多くの富をもたらします。
フランス王家との結びつきを図り、自らもフランス王妃カテリーナ・ディ・メディチの孫娘と結婚しますが、更にある縁談を企画します。
故フランチェスコ1世と故ジョヴァンナ・ダウストリア(フランチェスコの先妻)の間には、成人した息子は居なかったものの、4人の娘がいました。フェルディナンドは、
フランチェスコ1世の娘マリア(1573-1642)とバツイチだった
フランス国王アンリ4世(先妻はカテリーナ・デイ・メディチの娘にあたる王妃マルゴ)結婚を企てます。イタリア語読みでは、マリア・デ・メディチですが、日本では、フランス語読みの
マリー・ド・メディシスが一般的なようです。今回私は、イタリアびいきで(笑)マリアと記載します。マリアには何度か縁談話があったものの、上手くいかず、25歳まで独身だったのです。左の画像は、1595年頃にフィレンツェの画家アローリが描いた
フィレンツェ時代のマリア(当時22歳)。財政困難であったフランス王家と、政治的にフランスとの結びつきを取り戻したかったフィレンツェがお互いの利益になるこの結婚に合意します。
1600年10月5日にアンリ4世当時43歳、マリア当時26歳(結構、当時にしては晩婚・笑)は結婚します。
当初は、フランス側よりマリアの持参金100万ドゥカーティと提示されたのですが、フィレンツェ側との交渉により、40%引きのディスカウントして(爆)60万ドゥカーティにまで下がります(交渉してみるものですね!って実は、当時フランス王家はメディチ家に対して既に100万ドゥカーティの負債があったのでした・汗)。当時かなりの財産を蓄えていたフェルディナンドにとっても膨大な金額であった為、足りなかった分を、フィレンツェの貴族がカンパで(笑)補ったそうです。フィレンツェが
「フィレンツェ出身の二人目のフランス王妃」でいかに沸いていたかが想像できます。
フィレンツェで結婚の契約が行われた様子(画像上)、マリアがリヴォルノから船でマルセイユ到着し、フランスに上陸した時の様子(画像左)などは、現在、ルーブル美術館に展示されている
ルーベンスの連作「マリー・ド・メディシスの生涯」で描かれています。余談ですが、マリアはカテリーナ・ディ・メディチと違い、生涯で余り大きな功績を残さなかったので、ルーベンスも彼女の生涯を描くのにかなり苦労をしたようで、ギリシャ神話や寓話を盛り込みながら、大作に仕上げます。
カテリーナ・デイ・メディチと違い、政治的手腕を持ち合わせなかったマリアですが、唯一
「イタリア女」と呼ばれフランス国民からは毛嫌いされていたという点は同じだった様です。マリアとアンリ4世の間には6人の子供が生まれます。
そして、結婚から10年後の
1610年5月15日、フランス国王アンリ4世は、急進派のカソリック教徒によって暗殺されてしまいます。
こうして、マリアは当時9歳であった息子のルイ13世の摂政として、実質的にフランスの政権を握ります。マリアはフィレンツェから連れて来たイタリア人の相談役に政治を任せ、自らの浪費癖のために国の財政を利用します。こうした振る舞いにより彼女は、フランス国民からのみならず、息子ルイ13世からも反感を買います。
1617年、ルイ13世(当時16歳)は、母親であるマリアをブロア城に幽閉し、イタリア人相談役達は、逮捕、暗殺されます。2年後にマリアはブロア城を脱出し、一度はルイ13世と和解をします。
この様子はルーベンスの連作で、
「ブロア城を脱出するマリア」(画像左)や
「ルイ13世と和解するマリア」(画像右)として描かれています。実際は、ブロア城を脱出する際に、マリアの体重に耐えられず、ロープが切れそうになり、危うく落下する所だったという話も残っています。ルーベンスに絵を描かせるということは、この頃までは、まだお金があったんですねえ。
その後、マリアは再びクーデターを企て、
1631年にとうとう、フランスを追放されてしまいます。
ルイ13世は、
フィレンツェに戻るのであれば、経済的な支援を行うという条件を提示しますが、マリアはこの申し出を断ります(今更、フィレンツェには帰りたくなかったのでしょうね)。その後、経済的にかなり貧窮したマリアはブリュッセルへ亡命し、その後ケルンに移ります。伝説では、王妃時代に自らのお付きの画家であったルーベンスのアトリエに身を寄せ、
1642年にそこでひっそりと亡くなったそうです。
人生色々ですね・・・。
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