通訳と食事

今、通訳2日目のお仕事を終え、帰宅しました。
今日は、フィレンツェ周辺の革製品の工場を4軒ほど周りました。午後訪問予定だった訪問先のオーナーさんとキャンティ地方のレストランで商談をしながらのランチもあり。
案内されたのはオリーブ畑に囲まれた素敵なレストラン。
商談を兼ねたランチの場合、基本的に通訳は食べられないことは承知済み。それでも周囲はオーダーをしてくれます。私が選んだのは、前菜の鴨のハムオレンジ添え、プリモのマントヴァ風カボチャのラビオリ。どちらも食べやすさから選んだお料理です。鴨を頼んだ瞬間に、「もし厚めに切られていたら噛み切るのが大変かも?」という不安がふと頭をよぎりましたが、運ばれてきたのは薄切りの柔らかい鴨肉のハムと小さく切った付け合せのルッコラのサラダでした。

さて、通訳をしながらものを食べるというのは、なかなか困難な作業です。通訳のお仕事をされている方の中には、まったくお料理に手をつけられない方もいらっしゃいますが、私は性格的にそれが出来ないんです。美味しいお料理を前にして、一口も手をつけないというのは・・・出来ません(笑)。で、私の技は、まず、お料理を一口で食べられる大きさに切り分け、手早くフォークとナイフでまとめます。その間も、通訳作業は続行中。そして、一番、ゆっくりと話す方に、話し手が質問をし、その質問を私が訳し終わった時点で、パクッ。更に、急いで飲み込みます。質問された人が回答を考えている間に食べるわけです。

当然、質問者が質問をすると、chihoしゃべる、その質問に対して回答者が回答すると、chihoしゃべる・・・の繰り返しなので、結局、私がしゃべりっぱなしになるわけです。普段それ程早口ではないのですが、通訳をしている最中は、イタリア語でも日本語でもかなり早口になります。
会話に熱が入ってくると、イタリア語に訳すときには振りつきになります(笑)。

さて、仕事中は勿論、携帯電話はオフにしているのですが、一瞬トイレに立った時にふと見ると、幼稚園からの着信が3件(ヒエ~!)。慌てて、幼稚園に電話をすると、ユキちゃんが熱を出して用務員室で寝ているとのことでした。幸い、先にアントネッロに連絡が付き、彼が迎えに行ってくれました。ヤレヤレです。

そして、通訳サービス無事終了。

毎回、こうした単発の通訳のお仕事をお受けするたびに、120%自分のベストを尽くそうとする反面、素晴らしい日本語ーイタリア語通訳の先輩方を思い出し、まだまだだなあと自分の未熟さを感じます。1語残らず正確に的確な言葉に訳すというのが素晴らしい通訳だと思います。
一度、イタリア語通訳では第一人者の、田丸久美子さんの通訳を拝聴したことがあります。そのクオリティーと正確さは抜群でした。その時はイタリア人アーティストの講演会だったので、かなり抽象的な内容の話だったのですが、それを的確な言葉に瞬時に訳す田丸さんのセンスは、素晴らしかったです。

イタリア語通訳養成コースみたいなものがあれば、いつの日か受けてみたいなあ。
いつか、子育ての手が離れたら・・・

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Commented by Mezzana at 2007-02-10 06:11 x
お仕事お疲れ様でした。

>1語残らず正確に的確な言葉に訳すというのが素晴らしい通訳だと思います。

私もそう思います。時々ご自分の感情を交えて訳されたりアドバイスを交えたりしている方もいらっしゃいますが、私は通訳というのは機械になることに徹して話しての言葉に忠実にならなければいけないと思っています。

でもそうなるためには殺人的な集中力と、文化的背景への大きな理解力が必須ですよね。おまけに接客能力や相手を思いやる態度も必要だし、通訳のお仕事って本当に大変だとお受けするたびに感じます。

しっかり食事方法まで編み出しているchihoさん、素晴らしいと思います!イタリア人ならせっかく頼んだお料理は、おいしく食べてくれる方のほうが嬉しいに決まっていますよね。私はとてもじゃありませんが食べる気にはなれず、でもそうなると「食べないと逆に気を使わせてしまうかも…」と気になってしまうという神経の細い人間です(涙)。

Commented by kome at 2007-02-10 07:29 x
田丸さんのご本、以前読んだことがあります。たしか「シモネッタ ・ ガセネッタ」だったかな。とても愉快でした。通訳の人って、面白いですよね。突き抜けてるっていうのかな(笑)。
Commented by julia at 2007-02-10 10:36 x
chihoさん、こんにちは。
涼しい顔をしてにっこり通訳しながら、心の中でいろいろ(汗、焦)瞬時に考えているchihoさんの様子が目に浮かびました。(爆笑)
お疲れ様!^^
通訳とは、いろんな知識や配慮はもとより、実に人間味のある体力勝負の仕事なんですね!
ユキちゃんの具合はどうですか?
アントネッロさんがいてくれて良かったですね!^^
Commented at 2007-02-10 13:46
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by kajimama at 2007-02-10 17:35 x
田丸さんの講演を聞いたことがあります。ド迫力でした。オフレコですけど・・・って面白い話をたくさんしてくださいました。「イタリア語の通訳者はいいのよぉ・・・料理、ファッション、オペラにサッカー・・楽しい事ばかり。」はぁ~革の関係もありましたか。

私はテーブル通訳しかしたことがあしませんが、食事中通訳者が後ろに座って見ていると外国人は落ち着かないみたいです。あなたも食べなさいよ・・って言われますけど・・・その点、企業ご接待の時のガイドは遠慮なくご相伴にあずかっています。

あと1週間でフィレンツェ・・ウフフ、楽しみです!
Commented by kchan0221 at 2007-02-10 18:05
Chihoさん、2日間お疲れ様でした~!
よく商談などの通訳をしている友人は、言っている事を的確に、でも、両方の文化も考えてこれは言い方を変えないと・・・などと考えることも多いから大変~!と言っています。
仕事だから仕方ない。といってしまえばそうなのかもしれませんが・・・。
美味しいご飯を目の前にしたら・・・。
ユキちゃん、大丈夫ですか?アントネッロさんがお迎えに行ってくださってよかったですね。
Commented by ryuji_s1 at 2007-02-10 19:15 x
通訳のお仕事お疲れ様でした。

凄いですね 商談の通訳 難しそうです、
Commented by naolicu at 2007-02-10 20:23
またまたお疲れさまでした。
ご家族とゆっくりリラックスしてください。
私もルーマニア語、うまくないたいです。英語もドイツ語もイタリア語もフランス語もスペイン語もハンガリー語も。これら全部話せる友人がいます。じ・・・・・(尊敬と羨望の眼差しの音です)
Commented by rinrin at 2007-02-10 21:01 x
はじめまして。
いつも、行った事のないイタリアを興味深く拝見しております。
クリスマスローズなんて、その辺に咲くものだと思いませんでした。
リンクさせていただきました。
また寄らせていただきます。
Commented by aoyadom at 2007-02-10 21:45
私も通訳の端くれですが、MEZZANAさんと
同感、通訳者は自分の感情を交えず、省略せず、
相手の言葉をとにかく性格に訳す事に尽きると思います。
アドリブ入れてしまったり、どちらかを気遣うような通訳を
してしまうと、通訳者は気を使ったつもりでも
必ずと言っていいほど誤解が生じたり、トラブルになったりしますよね。
私も最近は図々しくなり、お食事が出来るようになってきました。
でも、ホテルやバックにアメやチョコ、カロリーメイト
を忍ばせるのは
癖ですね。苦笑
Commented by chiho at 2007-02-10 21:54 x
mezzanaさん>そうなんですよね。物事が旨く運ぶようにと気を遣って感情を入れてしまうと、必ず後でつじつまが合わなくなってくるんですよね。お互いに人間だから、必ずしも質問に対して正確な答えを出してくるわけではないのですが、そこで通訳のプロセスで修正を加えてしまうと誤解が生じてしまうんですよね。あと、もうひとつ心がけているのは、ひたすらクライアント(通訳にお金を払った人)優先。両方が話をする時、クライアントが話したがるときには、相手をさえぎってでもクライアントの発言を優先します。通訳って殆どがフリーランスだからこうした情報交換ってなかなかないけれど、イタリア語通訳のコミュニティーのようなものが出来てお互いの情報を交換し合えばそれぞれもっと良い通訳が出来るようになるでしょうね。
Commented by chiho at 2007-02-10 21:56 x
komeさん>田丸さんの本、私は読んだことがないのですが、面白そうですね。余りに自分に近すぎて手をつけられなかったのですが、いつか呼んでみたいと思います。
Commented by chiho at 2007-02-10 21:59 x
juliaさん>私のような通訳の端くれが言うのもなんですが、通訳の仕事って、度胸が必要です。一発勝負のようなところがあって、口に出してしまったこと、訳してしまったことはもう修正が出来ないのです。帰り道に、「ああ、この表現のほうが当てはまっていたかも」と反省することは尽きないんですけどね。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:06 x
鍵コメさん>そうなんですよね。大切なのは「正確さ」に尽きます。それは直訳という意味ではなく、スピーカーが伝えたい意味を伝えるというもの。経験を積まれ、常に質の高い通訳をされている方は、こちらが予想もしていない言葉に置き換えたりすることもあるのですが、それがとってもしっくりときたりして。なかなか言葉の世界も奥が深いです。そうそう、困るのは「駄洒落」を連発される日本人のお客様や、イタリアの笑い話を連発されるイタリア人のお客様。何とか笑いを取りたいのですが、いつも滑ります(笑)。無理だって。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:11 x
kajimamaさん>田丸さんは、彼女の経験や面白いエピソードが強調されていますが、実際の通訳の場ではやはり抜群のセンスを持っておられます。正確で美しい通訳は聞いていて耳に心地よいです。
いよいよですね。お待ちしています♪こちらは結構暖かいですが、まだまだ真冬なので油断は禁物です。たまに天気が崩れるので折りたたみ傘もお持ちになってくださいね。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:15 x
kchan0221さん>そうですね。文化の違いはかなり大きいです。今回は、ものづくりの現場を見ながらの通訳だったので、割と楽でした。会計関係の数字ばかりの通訳の時には、1人で長時間はやはり持ちません。
そんなときは図々しく休憩を要求します。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:17 x
ryuji_s1さん>そうですね、難易度は、色々な条件によって変わってきます。今回は、もの作りに関する通訳だったので割りと楽でした。会議などで喧嘩ごしになってしまうとお手上げです。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:19 x
naolicuさん>ルーマニア人の方はイタリア語を習うのが結構上手なんですよね。イタリア語とルーマニア語は共通点があるのかな?ルーマニア語はラテン語の文法に近いと一度聞いたことがあります。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:21 x
rinrinさん>リンク有難うございました。大変光栄です。クリスマスローズは今、沢山咲いていますよ。森に咲いているのは薄い緑色です。
これからもどうぞ宜しくお願いします。
Commented by chiho at 2007-02-10 22:24 x
aoyadomさん>私も水と「非常食」はバッグに隠し持っています。お食事の時間はお客様次第ですからね。食事をしっかり取る方もいれば、食事を抜いてでも、見本市をご覧になりたい方もいるし。でも基本的に、イタリアにおいでになる日本人のお客様は、イタリア料理のランチも魅力なので、しっかり食事を取られる方が多いです。後はご招待されることも多々あります。もちろん、通訳は余り食べられないんですけどね。私もおなかがグ~ってならないように、何か食べるようにはしています。
Commented by tammys04 at 2007-02-11 02:28 x
こんにちは。
通訳って大変な仕事だと毎回終わった後に思います。
今回は長丁場でしたが、1日だけのお仕事の時も長い時もその思いは同じです。
いかに相手の言いたいことを同じ大きさ、大切さ、重さで伝えられるか。多くても足りなくてもだめだし、自分の感情や意見なんてとんでもない!
きっとみなさん良かれと思ってなさっているアドバイスだったりするのでしょうけれど、私もMezzanaさんの書いてらっしゃるように私も機械に徹するようにしています。(なかなか難しいですが)
お客様が質問している内容がたとえ誰でも知っていることだったとしてもそれをそのまま相手に伝えなければならないし、マエストロが怒っているのに生徒に優しい口調で通訳するのも駄目なんですよね(私事ですが)。
私もお食事通訳、よくあります。初めての時は食事にまったく手をつけず、クライアント側ではなくイタリア人側から気を使われ、気にしないように言うとイタリア人がクライアントに英語で私にも食事をさせるよう言ってしまい、申し訳なかったという経験があるので、様子を見計らって飲み込むようにしています(笑)慣れてくるとそれも出来るようになりますね。
Commented by chiho at 2007-02-11 06:35 x
tammysさん>いよいよ楽しかった日本滞在もおしまいですね。そろそろフィレンツェに戻られる頃ですよね。ゆっくり出来ましたか?
こういうイタリア語の通訳同士の情報交換の場って考えてみると余りないような気がします。それぞれがフリーランスで活動しているからでしょうね。通訳のテクニックに関する情報交換の場が出来ると良いなあと思います。
by lacasamia3 | 2007-02-10 05:50 | 私の独り言 | Comments(22)

フィレンツェで山暮らしをするchihoの田舎便りです。フィレンツェの街歩き情報、イタリア風家庭菜園、お勧めレストラン現地情報、日帰りで行ける街の情報など。フィレンツェの滞在型アパートの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営しています。


by chiho