僅かな望み

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木曜日の午後、中央センターから救急車の特別要請がありました。
普段は24時間2台体制の救急車をスタンバイさせているのですが、特別にもう一台、夜の8時から必要になるとのこと。この日の朝、フィレンツェの南側、グレーヴェ・イン・キャンティから10キロ程郊外の小さな集落で、ガス爆発によると思われる建物の崩壊があり、3人が瓦礫の中に閉じ込められてしまったのです。残念ながら、2人は既に遺体で発見され、残る1名の女性を捜索している所でした。

朝から現場に待機していた地元の救急車のチームと交代をするために、私とドライバーのD君が夜6時半に出発することになりました。私たちのセンターがある場所から現場はフィレンツェをはさんで反対側、1時間半ほどの場所にあります。もっと近い場所に救急センターは沢山あるのですが、フィレンツェでモニターや薬剤を搭載した救急車を余分に持っているのはうちのセンターだけなのです。途中、グレーヴェ・イン・キャンティの救急センターでドクターと合流し、3人で現場に向かいました。

夕陽に照らされた美しいワイン畑の合間に、多くの消防車が停まっていました。

手前で救急車を停めて、担架、モニター、リュックを徒歩で運び、やっと捜索現場に到着。現場は、車がやっと1台通るほど路地沿いに10軒ほどの石造りの素敵な家が並ぶ小さな丘の上の集落でした。

交代のチームと情報を交換し、その後はシャベルカーと手作業で瓦礫を取り除く消防隊員達の作業をずっと見守っていました。消防隊はシエナとフィレンツェから出動してきて、総勢70人程で、中には大柄な女性も居ました。既に消火作業は終わっていたけれど、ものすごい埃の中、皆、黙々と無言で救出作業をしていました。ある時、シャベルカーのエンジンが止まったので、「見つかったか?」とドクターと緊張して目を合わせたら、わーっとプラスチック皿に盛られた温かいパスタが回ってきて、一瞬休憩。消防隊員はあっという間に食べてしまって(食べるのが早い!)、すぐに作業を再開していました。夜が更けてきて、少し寒くなってきたころ、近所の人が配ってくれた温かいコーヒーがとても有り難かった。
途中からレスキュードックも到着し、残りの一角の瓦礫を取り除いていたところで、深夜0時に、急にすべての音が止み、その場所にライトが集中してあてられました。皆、黙って作業を見守っている中、ドクターと私たちが呼ばれ、瓦礫の山のすぐ下に近づき、万が一に備えて待機しました。

結局は、最後に発見された3人目の方も手の施しようがなく、消防隊員によって瓦礫から運び出されました。
私たちに託されたわずかな望みは叶う事なく、残念ながら役に立つことは出来ませんでした。何より辛かったのは、現場から少し離れた場所で作業の様子を伺っていたご家族が、ドクターと私たちが空のストレッチャーと担架を運んで来たのを見て泣き出したことでした。

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消防隊員の事故に備えて、作業が完全に終わるまで待機し、私たちのセンターに戻って来たのは夜中の3時でした。翌朝、昼前に起きて、ラーラと散歩をしながら、「昨日、埃まみれで働いていた消防隊員達も、今朝はこんな風に過ごしているのかしら?」とふと思いました。
警察の現場検証が続いているので、詳細は書けないけれど、2か月前に購入したばかりの家にご家族3人で朝やって来たところでの事故だったのだそうです。普段、私たちは些細なことに右往左往しているけれど、ある時突然、全てが消えてしまうこともありうるのですね。

壮絶な一晩でしたが、トラウマとかはなくて、私は元気です。
疲れているだろうからって、翌朝のシフトを後退してくれたFちゃんに感謝。


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by lacasamia3 | 2021-05-22 22:46 | イタリア救急車ライフ | Comments(0)

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