別れの時

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昨日は朝の救急車のチェックの後、イエローコードが1件。行き先はF1サーキット。ジュニアのレース中に起きた10代前半の子供のバイクの転倒事故でした。
容態は安定しているけれど、念の為、フィレンツェからドクターヘリも出動。結局、私たちがサーキットに到着するのと同時にドクターヘリも到着したので、私たちはそのままセンターに戻ることに。

その後、キッチンのお掃除をしていたら、再びサイレンが鳴りました。今回はレッドコード。在宅緩和ケアのため病院から自宅に戻った後、呼吸困難を起こしている高齢女性でした。
点滴のために看護師と腕を見た所、浮腫んだ両腕に入院中の時の点滴によるの青い大きなアザがありました。酸素マスクをつけて血中酸素率を上げ、呼吸困難を多少緩和、更に医師の応援を依頼しました。別の救急車でフィレンツェから医師が到着し、家族と話して、本人と家族の希望で病院には行きたくない事を確認。医師は真っ先にとっても優しい声で女性に、「病院には行かないから心配しないでね」って伝えました。それを聞いて彼女の呼吸が少し穏やかになったように見えました。

その後、医師が症状を和らげる薬を投与し、少しずつ女性の意識が朦朧としていく中で、私はそっと部屋の入り口に移動し、部屋の中では、娘さんと旦那さんが彼女のベッドの両サイドに座っていました。娘さんの細い背中は震えていて、旦那さんは奥さんの頭を優しく撫でていました。
薬が効いてきたのか、呼吸は更に穏やかになり、女性は何か一生懸命、宙を見ています。旦那さんが「何を見てるんだい?」って聞いたけど、彼女は無言のまま。「綺麗なものを見てるのかい?」って彼が聞いたら、女性はマスクの下から微笑んでコックリと頷きました。

私は立ち尽くしてボロボロ泣いてしまったけれど、マスクとゴーグルをしていたので誰にも気付かれなくて良かった。
救急車に生体モニターや酸素ボンベを積み直して、ふと、ドライバーのスナフキン(あだ名)に「彼女、あなたのことじっと見てた。良く知ってるんでしょ」って言ったら、私に背を向けたまま「勿論さ」って答えてた。

私はまだヘタレで鋼の心は持ってない。きっとこれが「当たり前」にはならないと思う。毎回、患者と患者を囲む家族の気持ちに対して、慣れることなく、大切に尊重して向き合いたいと思う。

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Commented at 2020-07-06 05:45 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2020-07-06 07:30
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by さと at 2020-07-06 08:18 x
千穂さんの文章にこちらが泣きそうです。。。なんてすごい現場に遭遇されているのでしょう。本当に尊い活動をされていますね。今後これらのご経験が一冊の本になって読んでみたい気持ちになっています。ますます千穂さんのお人柄とご活躍に引き込まれています。遠い日本から本当に応援しております!くれぐれもお身体ご自愛くださいね。
Commented by torolinus0523_i25 at 2020-07-06 08:30
おはようございます。

お疲れ様でした。
切なく、尊い時間に立ち会われたのですね。

最期まで向き合って、
その方の尊厳を守って接するご家族とみなさん。
きっと宙をみながら、とても幸せな人生だったと思っていたのでしょうか。

命に接する時、私も千穂さんのようにありたいと思います。

ebu ebu
Commented by シンディ at 2020-07-06 10:26 x

そういうことが、何より大切なのだと思います。

Commented by Nichola at 2020-07-06 10:46 x
スナフキン(あだ名)に「彼女、あなたのことじっと見てた。良く知ってるんでしょ」って言ったら、私に背を向けたまま「勿論さ」って答えてた:

スナフキン好きだなあああ。
Commented by あつこ at 2020-07-06 11:11 x
誰でも必ず訪れる別れの時
愛するご家族に見守られて
安心できるご自宅で迎えられたのですね。
何をご覧になっていたのかは、彼女のみぞ知る。
あえて想像はいたしません。
ご冥福をお祈りいたします。
Commented by 景子 at 2020-07-06 21:36 x
冒頭の写真が印象的でした。ご家族に見守られ、ご自宅で旅立った彼女は、幸せだったと思います。その場に居合わせた医師達の優しさと貴方の涙もきっと彼女は感じ取っていたと思いますよ!
多分、スナフキンも涙したでしょう。知り合いなら尚更です。ご主人にその日の出来事をお話しされて、気持ちが少し楽になられましたか?お疲れ様でした。
Commented by マグパイ at 2020-07-07 05:11 x
救急隊の仕事は生と死に関わる尊い仕事ということを改めて思いました。イタリア人が喜怒哀楽をダイレクトに表すのも、大切なことだと思います。心が干からびていないということでしょう。ちほさんがそこで涙なさったことも。そこから気持ちを切り替えることも。当事者の気持ちに寄り添うこと、喜ぶ人とともに喜び、泣く人とともに泣く。全てに言えることですね。お仕事頑張って下さい。
Commented by kotaro_koyama at 2020-07-07 06:18
救急車を呼んでも、病院に行かないという選択肢があるんですね。僕もいざと言う時は延命して欲しくないから、ありがたいな。日本では難しいのでは…?
Commented by さきママさき at 2020-07-07 12:37 x
亡き母を思い出しました。
病院の緩和ケア科からホスピスへ
救急隊のお世話にもなりました。
母を取り巻く全ての方に今でも感謝しております。
側にいてくれるだけで心強かったです。
素晴らしいお仕事これからも頑張ってくださいね。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:22
鍵コメjさん、母がいつもお世話になっています。梅雨にも負けず元気ですよー
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:25
鍵コメkさん、そうですね。特にこのような時期は病院へ見舞に行くことも出来ないので。イタリアでは在宅緩和ケアがかなり普及しているんですよ。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:27
さとさん、そうですね。普通では遭遇することが出来ない貴重な経験をさせてもらっています。心がぎゅっとなるけど、ネガティブに引きずらない性格なので(忘れないように努めていますが)、私に合っているのかもしれません。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:28
torolinus0523_i25さん、ご家族にとってもご本人にとってもとても大切な時間だったんだと思います。一緒に居られて良かったと思います。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:50
シンディさん、そうですね。人生の中で一番心に残る時間でしょうね。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:54
Nicholaさん、皮肉屋で、絶対人のこと褒めないし、文句が多いし、食べ物の好き嫌いが激しいし・・・(まだまだあるある・笑)。でも救急車のドライバーとしての経験値は一番高いかも。そしてなぜか地元のお年寄りに人気があるのです。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:55
あつこさん、何を見ていたんでしょうね。旦那さんが「そうか綺麗なものを見てるんだね、良かった」って言っていました
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 16:57
景子さん、こうして話を聞いてくれる家族の存在が、私にとっては大きな支えです。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 17:02
マグパイさん、生と死は本当に隣り合わせなのだと感じます。今回は病院搬送はなかったけれど、搬送中に容態が急変することもあるので。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 17:05
kotaro_koyamaさん、そうなんです。自宅緩和ケアはかなり一般的で、自由に選べるんですよ。基本的には病院の指示に従いながら、ホームドクターの管轄になります。fase 1-4と、痛みや症状によって薬が変わり、その処方箋が病院から出されます。
Commented by lacasamia3 at 2020-07-10 17:08
さきママさきさん、お母様を亡くされた悲しみは大きいでしょう。でもきっとホスピスで穏やかな最期をお迎えになられたのでしょうね。
by lacasamia3 | 2020-07-06 03:18 | イタリア救急車ライフ | Comments(22)

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