塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘

ルネサンスの思想家ニッコロ・マッキャヴェッリは、メディチ家追放後に生まれた共和国政府の元、1498年に29歳という若さで、第二書記局長に選出され、主にフィレンツェの外交に従事し、各国とフィレンツェの政治交渉の場にて活躍します。
ところが、1513年、元メディチ家出身のローマ教皇レオ10世が、スペイン軍の後押しによりフィレンツェを奪回したため、メディチ家がフィレンツェへと戻り、共和国政府に加担した者として、マッキャヴェッリは逮捕され、事実上フィレンツェから追放されてしまいます。
そして彼は、財産として唯一残った家と土地があった、ここ、サンタンドレア・イン・ペルクッシーナへと移り住むのです。そして、政府からの声がかかるのを待ちながら、14年間、ここで「君主論」、「フィレンツェ史」」などの傑作を執筆します。彼はこの田舎家でも、執筆活動をするときには、いつも官服に着替えたと伝えられています。そして、1527年、再びメディチ家が追放された年に、マキャヴェッリは58歳で亡くなります。


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_2534733.jpg



サンタンドレア・イン・ペルクッシーナは、村と呼ぶのがはばかれるほど小さい。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_25802.jpg



それでも、村、と呼ぶことにするが、丘陵の上の大地に、小さな教会が一つと、地主、これがマッキャヴェッリ家だが、その地主の家と、居酒屋1軒と井戸一つと、当時は小作人やそのほか小さな職業をもつ者の住む家がいくつかと、これだけが、サン・カシアーノの村とカッシア街道を結ぶ小道をはさんで、つつましくかたまってあるだけなのだった。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_361195.jpg



夜がくると、家にもどる。そして書斎に入る。入る前に、泥やなにかで汚れた毎日の服を脱ぎ、官服を身に着ける。
礼儀をわきまえた服装に身をととのえてから、古(いにしえ)の人々のいる、古(いにしえの)宮廷に参上する。
(中略)
机を前に坐ったマキャヴェッリの眼は、貧しい灯りをうけてやわらかに沈む部屋の片すみを見ているようでいて、見ていない。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_3134724.jpg



サンタンドレアの山荘は、一階の広間をぬけると、ベランダのようなつくりになった庭に出る。この庭は家の前を通る道からすれば並行線上に位置するが、裏側から見れば、一段高く作られている。丘陵の斜面に、山荘が建っているからだ。(中略)今ではそこから下って再び向かい側の丘陵に至る斜面は、一面の葡萄畑が埋めている。眺望は美しく、庭が一段と高いだけに、見晴らし台の役目もはたしていたのかもしれない。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_3172349.jpg



その庭に出て、何気なく右手の方角に眼をやった私は、胸に、鋭い刃物かなにかで突かれたような、肉体的な痛みを感じた。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)


塩野ワールド~マッキャヴェッリの山荘_f0106597_3195856.jpg



フィレンツェが、見えるのである。右手の下方はるかに、サンタ・マリア・デル・フィオーレの、レンガ色に白い稜線の走る円屋根が見えるのだ。

(塩野七生 我が友マッキャヴェッリ フィレンツェ存亡)

人気blogランキングへ
気に入っていただけたら↑をポチッとクリックしてください♪
Commented by fumieve at 2012-05-26 05:04
すごい、ほんと、本の通りというのか、見ての通り執筆された、というのか・・・。
マキャベッリ、ペルージャにいた1年目、イタリア文学(だったか???)の授業で、「君主論」一冊まるまる読まされ・・・それ以来、食わず嫌いならず、食えず嫌いになっていました。
こんなのどかなところで書かれたなんて、信じられないですねー。まるで獄中で書かれた文章のように思えましたが・・・。
Commented by senbeis at 2012-05-26 06:18
おはようございます♪
読みながら、思い浮かべながら、
そこにいるような感じになりました‥
綺麗な風景〜。
朝食前なので美味しいランチの画像には
キュッとなりながら、(笑)
Commented by 猫の整体師 at 2012-05-26 10:09 x
NHKのEテレ(教員テレビ)の「100分de名著」という番組で昨年マキャベリの「君主論」を取り上げていました。

学生時代は受験のために暗記した著者と著作名のセットでしたが、この番組では20分4回シリーズで難しそうな名著を解りやすく解説しており、この君主論は現代にも通じる教訓的な内容が数多く盛り込まれており、面白く見ていました。

こういう場所で書かれていたなんて感動的ですね。また、その跡が残されているのが素晴らしい。

今後何回か訪ねたいと思っているイタリアでは、過去にさらりと読み流していた歴史を紐解き、細かく訪ね歩きたい気持ちになりました。
Commented by mattfrafra at 2012-05-26 11:44 x
昨夜、「わが友マキアヴェッリ」を取り出し、序章「サンタンドレア山荘・五百年後」を読みなおしました。Firenzeから山荘までの道、山荘の様子、そしてベランダから見えるクーポラ。
作家の表現力はさすがにすばらしい。ただし、山荘からクーポラの見える様子は想像するしかなかった。Chihoさんの写真で、マキアヴェッリがどのような思いで、この風景を見ていたのかを考えると・・・。いや、本当にありがとうございました。
Commented by aiko at 2012-05-26 14:14 x
しみじみと心にしみる文章と映像がぴったりと一致して素晴しいです。塩野さんは何度か本を手に取ったものの完読あたわず、もしこのような映像と共に読めたら・・・。
Commented by la_mia_coccolina at 2012-05-26 17:36
chihoさん、こんにちは^^
時の流れを遡り、マッキャヴェッリの世界、塩野ワールド。。。
ん~、良いですね~^^
chihoさんの撮った写真がますますその世界へと惹き込んでくれます^^
Commented by kaorihie at 2012-05-26 18:41 x
塩野七生さんは私だけでなく日本人のイタリアびいきを増やした張本人ですね。千穂さんもファンだったのですね。今回文章と共にまんまの写真がみられてマキャベリが実在し我々と同じ血の通った人間だったのだと実感できました。また塩野七生さんの歴史現場のみかたも素晴らしい。久しぶりに読み返してみようと思います。
Commented by gantou at 2012-05-30 10:35
マッキャヴェッリ、塩野七生、を題材とした千穂さんのブログは秀逸です。千穂さんの解説と写真が読者を惹きつけます。また、お願いします。コメントの方々も素晴らしい格調の高い評価をされてます。
by lacasamia3 | 2011-06-16 16:18 | フィレンツェから日帰りで行く町 | Comments(8)

フィレンツェで山暮らしをするchihoの田舎便りです。フィレンツェの街歩き情報、イタリア風家庭菜園、お勧めレストラン現地情報、日帰りで行ける街の情報など。フィレンツェの滞在型アパートの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営しています。


by chiho