2000年の時を越えて~ローマ国立博物館

お題はカラヴァッジョ!なんて宣言をしておきながら、今回ローマ訪問で見た作品の中で一番の傑作だと私が思ったのは、ローマ国立博物館(パラッツォ・マッシモ)に収蔵されている、「休む拳闘士」でした。


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ローマ時代、主にグラディアトーレと呼ばれる剣闘士達が、円形劇場やコロッセオで催しとして行われていた試合に出場していました。中には貴族の子息、ローマ市民出身の剣闘士も居たそうですが、奴隷出身の剣闘士が主だったそうです。


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彼はどうやら、Pugilatore(プジラトーレ)と呼ばれるボクシングの拳闘士。手にはローマ時代のボクシングのグローブをはめています。
こうした挙闘士を彫刻で表現するとき、通常は華々しい戦闘シーンを描くと思うのですが、この無名の彫刻家は、戦いを終えた挙闘士が一人休んでいる所を捉えています。紀元前1世紀の作品。


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筋肉が付いた体は青年のようですが、顔を見ると、それは若者ではなく、疲れた中年男性という感じ。


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頭突きで怪我をしたのか、耳や顔のあちこちに切り傷があります。傷口から流れる血には、ブロンズではなく銅が使われています。


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この彫像は1885年にローマのクイリナーレの丘(現在のトレヴィの泉近く)で出土します。↑は出土当時の写真。発掘に立ち会った考古学者ロドルフォ・ランチャー二はこの彫像についてこのような言葉を残しています。

「私は今まで多くの考古学の発掘の場に居合わせた。次から次へと、新しい発見を試みた。時には予想だにしなかった傑作を発掘したこともある。しかし、この髭を生やした闘士の像がゆっくりと地中から出土する瞬間ほど、感動を覚えたことはなかった。それはまるで、輝かしい戦いの後、闘士が長い長い眠りを経て、目を覚ますかのようであった。」


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きっとこの彫像にはモデルが居たのだと思うのです。そして恐らく、彫像の作者の近しい人物だったのかも知れません。

ローマに行かれたら、是非この挙闘士に会いに行ってみてください。

ローマ国立博物館(パラッツォ・マッシモ)
テルミニ駅を背にして左手の角にある美術館です。
他の2館(パラッツォ・アルテンプス、ディオクレティアヌス浴場)との共通券で入ることが出来ます。

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Commented by 1897juventus93-10 at 2010-11-12 03:32
|☆JUVE★|・∀・)ゞCHIHOさん ユキちゃん アントネッロさん どもです~☆★ CHIHOさんTOSCANAに戻られたようで、お疲れさんでした☆★ とはいえ、ワッサカワッサカ畑や何やで、忙しくしてはるんでしょうが(笑) 
(・」∀・)」≪≪FORZA CHIHOさんっ☆★
この挙闘士、すーごい哀愁がありますね~ あんなグローブですから、地味に威力がありそうやし・・・ 痛っ!とかのレベルではないんは確かやろな・・・ ドスッΣΣ( ̄ロ ̄;)《声が出・・ナイ…》
耳の形も傷もさることながら、柔道の選手とかみたいに、若干つぶれてません?? CALCIO筆頭に、格闘技も好きなんですよね~ スポーツは全般に観る専門で好きです♪ やりは、、しません・・・(ザ・運動不足) 戦いたてなんやろなぁ~何に振り向いてるんやろ?!誰かに呼ばれた?!首を痛めた?!・・痛めて㊨向きっぱなしは辛いな・・・←感想
あ、そうそう帰宅された後、お家に『57』は何枚張っつけられてましたか?!?!(爆) ユキちゃん、やっぱり張るにしても57枚かな?(笑)
ではでは♪(・∀・)♪
 
Commented by woodstove at 2010-11-12 05:18
Chihoさん こん**は~。。。
 まさにこの剣闘士の生涯が語られているようにも見える作品ですよね。彼の目線の向こうには何があるんでしょうね。。。。。
Commented by nonnakaori at 2010-11-12 06:48 x
紀元前にこんなすごい作品を残したローマ人敬服します。
切り傷から血がでていてリアルです。
ローマ熱がますますそそられます。
考古学者の感動の気持ちも、発掘現場の写真から、すごく伝わります。
Commented by かもめ at 2010-11-12 09:46 x
ああ本当にこちらを訪問させていただく度,旅行熱が上がって上がって,夢にまで見そうな感じです。(笑)
フィレンツェもローマも見所がたくさんありすぎますねえ。
いつ実現できるかわかりませんが,次の機会に備えて,国立博物館も要チェック~とメモしておくことにしますね。
Commented by mariangelica at 2010-11-12 09:48 x
パラッツォ・アル・テンプス、パラッツォ・マッシモ…、私はここに行くといつもその作品の素晴らしさ、展示のエレガントさに感服してしまいます。素敵なリポート有り難うございます。
Commented by 中西 at 2010-11-12 14:42 x
こんにちは!ローマ滞在お疲れでした!
いつも、ちほさんの視点の写真 楽しく拝見していますが、今回の 「拳闘士の~」のセレクト大好きです♪
まるで、疲れて仕事から帰ったばかりのお父さんが玄関先で“ちょっと~っ!お醤油買って来て~”(byかかあ天下) といわれ 「やめてくれよ~」と心のなかで反論するも行ってしまうかなしくもやさしいお父さんに見えてしまいます。…作者の方ゴメンナサイ!
Commented by njs2005 at 2010-11-12 22:26
すごい・・・発掘に立ち会った考古学者の言葉鳥肌たっちゃった・・・この拳闘士の拳のモノはグローブの一部ですか・・・
カイザーナックルみたいだ。。。
Commented by eithbed at 2010-11-13 01:18
キャーすごい写真です。かっこいい。来年当たり、やっぱりローマですね。
Commented by じゅんごん at 2010-11-13 19:55 x
こんにちは。
美しく、迫力のある彫像ですね。ブログを通して、このような彫像にふれることができて幸せです。イタリアの中世やルネッサンスの文化に興味があるのですが、古代ローマの歴史も勉強していみたくなりました。
Commented by mamadance at 2010-11-14 04:21
この彫像、Pugilatoreというんですか、ここであえて嬉しいです。
というのは以前、格闘技について調べているときに、この彫像に出会いました。現在の格闘家のイメージとかなりかけ離れているために驚きを感じ、格闘家の意味を考えるきっかけとなりました。ですが、全然資料に行き会わず(インターネット上でも)、そのままにしておいたものです。耳から血が流れそれが銅で表現されていること、発掘時の写真まで!
驚きと感謝です!!
奴隷であるから戦わなくてはならないこの時代の格闘家と現在の戦いたい格闘家の間に隔たりがあるように思います。
Commented by Summer at 2010-11-15 18:20 x
彫像かぁ。デザインやアートにはたくさん興味があるのですが、彫像には全く興味がありませんでした。でも最近アート・ポートフォリオで彫刻を取り入れるといいアクセントになるのでちょっと勉強し始めたところです。今日、市の図書館で彫像の雑誌(からスタート・笑)を借りてきました。chihoさんのコメントは分かりやすくてお勉強になります!
by lacasamia3 | 2010-11-12 02:33 | ローマ プチ情報 | Comments(11)

フィレンツェで山暮らしをするchihoの田舎便りです。フィレンツェの街歩き情報、イタリア風家庭菜園、お勧めレストラン現地情報、日帰りで行ける街の情報など。フィレンツェの滞在型アパートの紹介サイト「ラ・カーサ・ミーア」を運営しています。


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