
先日、私が所属している「ウフィッツィ友の会」の会報が届きました。その中で、ちょっと面白いエピソードが掲載されていたので、久しぶりにフィレンツェの小話としてご紹介します。
フィレンツェでは、2010年9月24日から2011年1月23日まで、ストロッツィ宮殿にて、アーニョロ・ブロンズィーノの大きな展覧会が開催されます。ブロンズィーノの作品のほぼ70%が集まるという、中々貴重な機会。この期間は、多くの作品がウフィッツィ美術館からこの企画展に貸し出されるので、フィレンツェがもっとも栄えた時代、コジモ1世お抱えの画家として活躍したブロンズィーノの作品が目当ての方は、こちらの展覧会も訪れられると良いでしょう。
さて、上の肖像画は、バルトロメオ・パンチャーティキの肖像。裕福な商人の家庭に生まれた彼は、家業には余り興味を示さず、政治学と人文学にのめりこみます。1534年にルクレツィア・プッチと結婚した後(写真下)、コジモ1世により、フランス宮廷との関係を改善すべく、大使としてフランスへ送られます。
所が、フランスに滞在中、ルターが主導する宗教改革に多きな影響を受け、フィレンツェに戻った後、プロテスタント派の運動に参加し、それが元で、異端者とみなされ、投獄されてしまいます。その後、多額の保釈金を支払い、牢獄からは出て、メディチ家の庇護の元、政治家とし余生を送るのです。
一見、温厚そうな顔つきですが、手を見ると・・・彼の内面に隠された熱狂的な性格、周りの弾圧に屈しない頑固さが何となく感じ取れるような気がします。

さて、彼女はバルトロメオ・パンチャーティキの妻ルクレツィア・プッチ。フィレンツェの名家プッチ家生まれの彼女の肖像にはある「秘密」が隠されているのかもしれません。
その秘密とは、メディチ家当主コジモ1世との隠された恋。
首にかけた金の鎖には、"amour dure sans fin" (終わりのない愛)という文字が刻まれています。このメッセージは一体誰に向けられたものだったのでしょう?

1536年、コジモ1世に庶子ビア(画像下)が生まれます。母親は誰か明かされず、コジモ1世がすぐに引き取り、自分の子供として育てるのです。彼が正妻エレオノーラ・ディ・トレドと結婚するのが1539年なので、彼は結婚前の3年間と、その後も、別の女性との間に生まれたビアを大切に育てます。
この女性というのが、ルクレツィア・プッチだったのでは?というのが今回面白かった仮説。勿論、何を元に立てられた説なのかは判らないので、はなはだ疑わしいのではありますが、こうして色々想像するのも1つの楽しみ。
こうして、再度、上のルクレツィア・プッチの肖像を見ると、「実らなかった恋を過去に持つ女性」という感じがします。そして、金の鎖に刻まれた「終わりのない愛」は、コジモ1世に向けられたものだったのか?あるいは、生まれてすぐに引き離されてしまった娘ビアに向けられたものだったのか?想像は膨らむばかりです。

↑これがビア。コジモ1世はビアがとてもお気に入りで、公務にもしょっちゅう連れて出ていたそうです。所が、この愛くるしい少女は、残念ながら5歳で亡くなってしまうのです。きっと、彼女の死後、コジモ1世は、この肖像画を何度も眺めていたことでしょう。

彼女はコジモ1世の正妻、エレオノーラ・ディ・トレド。結婚前から結婚後も、ビアを自らの子供のように育てます。控えめで、表に出ることを嫌っていたそうです。でも彼女の肖像を見ていると、子供にはきっと優しかったのだろうなあと思ってしまいます(勝手な印象ですが)。
メディチ家の夫人の中では一番エレガントだと思う女性。ファッションのセンスも抜群です。
肖像画もなかなか奥が深いです。
今回ご紹介したブロンズィーノ作の肖像画はすべてウフィッツィ美術館所蔵です。これら全部がストロッツィ宮殿に貸し出されるかどうかは未だ判りませんが、その可能性が大きいと思います。
アーニョロ・ブロンズィーノ展
2010年9月24日から2011年1月23日
ストロッツィ宮殿
使用済みのウフィッツィ美術館の入場券やバス会社ATAFのチケットを見せると入場料が割引になります。
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Chihoさん こん**は~。。。
写真の無かった時代の肖像画には、様々なドラマやメッセージが
描き込まれているんですね。。。。
写真の無かった時代の肖像画には、様々なドラマやメッセージが
描き込まれているんですね。。。。
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こんにちは!
私はブロンジーノのファンですが、幸せなことに今回のブログの写真、全て本物を見ました。
彼の絵を目の前にしては、いろいろと当時のフィレンツェの様子を想像したり、裏話をおもいだしたりして、もの想いに耽ってしまいます(笑)。
またフィレンツェの地で、彼の絵を見てみたいなと思います。
私はブロンジーノのファンですが、幸せなことに今回のブログの写真、全て本物を見ました。
彼の絵を目の前にしては、いろいろと当時のフィレンツェの様子を想像したり、裏話をおもいだしたりして、もの想いに耽ってしまいます(笑)。
またフィレンツェの地で、彼の絵を見てみたいなと思います。

歴史の中のこういった想像を掻き立てられるような秘密っぽい話、大好きです(^^)
いろいろ想像していると・・自分までその時代にタイムスリップしたかのような気分になれます★
いろいろ想像していると・・自分までその時代にタイムスリップしたかのような気分になれます★

chihoさんこんにちは。
食い入るように読んでしまいました~~☆
名画の裏に、誰も知らない悲恋ドラマあり、、ですかね。なんだか切ないなあ。
ブロンズィーノは、こういう美しくも憂いのある肖像画を描かせたら随一でしたね。 私も、ルクレツィアの表情や細い手に、深い哀しみが垣間見れるような気がしてきました。。
もしも、もしも、ブロンズィーノ(時にティツィアーノ、時にラファエロetc)
が私を描いてくれたらどんな風になるんだろう、って妄想するのも楽しいです(笑)。 chihoさんだったら、誰に描いてもらいたいですか?
食い入るように読んでしまいました~~☆
名画の裏に、誰も知らない悲恋ドラマあり、、ですかね。なんだか切ないなあ。
ブロンズィーノは、こういう美しくも憂いのある肖像画を描かせたら随一でしたね。 私も、ルクレツィアの表情や細い手に、深い哀しみが垣間見れるような気がしてきました。。
もしも、もしも、ブロンズィーノ(時にティツィアーノ、時にラファエロetc)
が私を描いてくれたらどんな風になるんだろう、って妄想するのも楽しいです(笑)。 chihoさんだったら、誰に描いてもらいたいですか?
woodstoveさん>何気なく鑑賞している肖像画もこうしたストーリーを知るとなんとも面白くなります。
yumilinaさん>何でしょうね?鎖型や宝石を施したチェーンベルトは当時流行っていたようです。手でつまむ仕草は子供らしさをかもし出していたのかもしれません。ずっとポーズをとるのに飽きちゃって、チェーンで遊んでいたのかも知れませんね(笑)
villagecafeさん>ブロンジーノ単体の企画展としては、今回はかなり大きなもののようです。今度、行ったらまたレポートしますね。
fiorentinoさん>肖像画家というのは、目の前に居る人物の内面まで、絵筆で表現してしまうのでしょうね。
カーリーさん>ははは、私は、マサッチョあたりに、背景に居る農婦として描いてもらいたいかも。クワとか構えて、中景で、豚を従えながら、畑を耕している・・・みたいな(爆)
