異国情緒が漂う「牧者の礼拝」~第10~14室

今朝は朝から雪です。昨日のうちにお出掛けをしておいて良かった~(ホッ)。


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さて、クリスマスから1月6日のエピファニーア(公現祭=東方の三博士のキリスト訪問を記念したお祭り)の間にちなんだ絵画は沢山ありますが、その中で私がとても好きな作品をご紹介します。
ウフィッツィ美術館の大部屋第10~14室には、有名なボッティチェッリの「春」や「ヴィーナスの誕生」が展示されています。ボッティチェッリも好きなのですが、私がこのお部屋で1作品選ぶとしたら断然コレ!と思うのが、ベルギーの画家フーゴー・ファン・デル・グースの「牧舎の礼拝」1475年(別名、「ポルティナーリの祭壇画」)です。
3パネルに分けられているので、左側のパネルから順に見ていきましょう。


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黒い衣を着て、ベルを手にしているのは聖アントニオ、槍を持って赤い上着を着ているのが聖トンマーゾ、そして手前で手を合わせてひざまづいている男性が、この作品の依頼者、トンマーゾ・ポルティナーリ、そして後ろには、彼の子供が2人描かれています。
トンマーゾ・ポルティナーリは、メディチ家がヨーロッパ中に持っていたメディチ銀行のブリュッへ(ベルギー)店の代表でした。駐在中にこの作品を描かせ、1483年にフィレンツェに持ち帰ります。


異国情緒が漂う「牧者の礼拝」~第10~14室_f0106597_1754399.jpg背景の左奥には、身重の聖母マリアとジュゼッペがベツレヘムを目指して歩いている様子が描かれていて、こうした時間表現は、日本の絵巻物にも似ているなあと思います。


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そして、中央にはこの作品の主題、「牧者の礼拝」が描かれています。


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麦=パン、キリストが最後の晩餐でちぎったパン
白い百合=潔白 その他の百合=キリストの受難
7つの黒いオダマキ=聖母マリアの7つの苦しみ

など、シンボリズムを見始めるとキリがないのでこのくらいにしておきましょう。とにかくとても興味深い作品。
通常は、若い姿で描かれる天使ですが、ここでは、オジさん顔の天使(左側の二人)も登場します(笑)。


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そして目を惹くのが、農夫たちのリアルな表情。手も、農夫の手らしく、がっしりと逞しいのです。何と良い表情。


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そして右側のパネルには、赤い衣を着て竜を踏みつけた聖マルゲリータと、香油の入れ物を持ち、白い衣を着たマグダラのマリアが描かれています。下にひざまづいているのは、トンマーゾ・ポルティナーリの妻と娘。実際の人物は、聖人たちよりも小さく描いて区別している所がなかなか面白いです。


異国情緒が漂う「牧者の礼拝」~第10~14室_f0106597_1715319.jpg奥の背景には、星に導かれてやってきた東方の三博士(後方三人)が描かれています。


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ウフィッツィ美術館では、開いた状態で展示されているのですが、実はこの3パネルは、左右の2パネルが扉のように閉じる仕掛けになっています。裏側には受胎告知のシーンが描かれており、閉じた状態だと、↑このように見えるのです。
きっと、通常はこの状態で飾られ、クリスマスのミサでパネルが開かれ、「牧者の礼拝」を愛でることが出来たのでしょうね。

フランドルから運ばれてきた異国情緒溢れるこの傑作は、当時のフィレンツェの画家たちに大きな影響を与えます。

写真だと実物の100分の1の魅力も伝わらないです(涙)。実物を是非フィレンツェに見に来てくださいね~。

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Commented by cocopuff1212 at 2010-01-04 20:51
ここに行くためだけに(いやホントはそれだけじゃないですが、それだけでも私には充分!という意味で)、フィレンツエへ行く予定です。夏までにはなんとか…と思ってます。

chihoさんところのカテゴリ、ウフィッツィ美術館物語を拝見して予習の真っ最中です~。
Commented by lacasamia3 at 2010-01-05 03:53
cocopuff1212さん>いらっしゃるとき、お知らせくださいね。3月末から7月末までの期間は、ウフィッツィ美術館はかなり混むので、待たずに入れる入場予約を入れておいたほうが良いですよ。
Commented by ちびすけ at 2010-01-05 13:04 x
はじめまして。
数年前からお邪魔しておりましたが、ブログを持っていないのでコメントしようかどうしようかと迷っておりました。
この度、chihoさんと私、アントネッロさんと主人が同い年であることに気付き、どうでも良い事なのですが(苦笑)コメントしたくなってしまいこちらにもお邪魔してしまいました。
横浜に住むちびすけです。私たちにも10歳の一人娘がおります。
いつも素敵な山暮らし、楽しみに拝見しております。

今年も皆さんにとって素敵な年でありますように。
Commented at 2010-01-05 15:48 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by lacasamia3 at 2010-01-06 03:11
ちびすけさん>おっ!同じ年ですか~。イノシシですね。ご主人もアントネッロと同じとは、偶然ですね。これからもどうぞ宜しくお願いします♪
Commented by lacasamia3 at 2010-01-06 03:12
鍵コメnさん>確かに~。ところが、イタリア語だと同じgiglioなんですよね(笑)失礼、失礼・・・
by lacasamia3 | 2010-01-04 18:11 | ウフィッツィ美術館物語 | Comments(6)

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