静かな霊廟と家族の肖像~ラヴェンナ

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さて、サンヴィターレ聖堂を出て、順路に沿って進むと、敷地内には、ガッラ・プラキディア廟堂があります。写真の通り、シンプルなお堂です。

でも、中に入ると・・・


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ジャン!隙間なく全て装飾が施されています。

この霊廟は、サンヴィターレ聖堂よりも100年ほど早く建造されます。ガッラ・プラキディアは、ローマ帝国が東西2つに分かれる直前の、最後のローマ皇帝テオドシウスの娘でした。彼女が、自らと自分の家族の霊廟として作らせたのがこの建物です。実際には彼女はローマで亡くなった為、中にある石棺は、プラキディアに縁のある家族のものだと言われています。


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十字型の内部は、天井や回りの壁に美しいモザイクの装飾が施されています。
入って正面の聖人は、聖ロレンツォ。火あぶりにされて殉教したことから、バーベキュー用のグリル板のようなもの(汗)を持って指差しています。

入り口の上には、↑この美しい「よき羊飼い」と呼ばれるモザイク画があります。羊のモコモコ加減を固い石のかけらで一生懸命表現しようとした感じが良く表れています。

ガッラ・プラキディアは本当に波乱万丈な人生を送った女性なんですよ。

事実上、ローマ帝国が滅亡する間際、410年に西ゴート族(スウェーデンから南下してきたゲルマン民族の一派)によりローマ略奪が行われます。そして、ローマ皇帝の皇女であったプラキディアは人質として、西ゴート国王アラリックの捕虜となり、イタリア中を連れまわされ、その果てには、アラリックの弟アタウフルと結婚させられます。
ところが、夫アタウルフは自分が殺害した身内のゴート人の部下に襲われ、重症を負い、死去する前に、妻プアキディアをローマ人のもとに戻らせるように命じます。

当時の西ローマ帝国の首都は、ラヴェンナへ移っていたため、彼女は、西ローマ帝国の皇帝、兄のホノリスがいるラヴェンナへ向かいます。ところが兄のもとに戻ったプラキディアは強制的に将軍コンスタンティウス(後のコンスタンティウス3世)と結婚をさせられてしまいます(涙)。この結婚で二人の子供が生まれます。

コンスタンティウス3世として皇帝となった夫がすぐに死去すると、兄のホノリウス自身が求婚者となってしまいます。この結婚を避けるために、プラキディアは子供と共に、甥がローマ帝国の皇帝として治めるコンスタンティノープルへと逃げてしまいます。

ラヴェンナで兄ホノリウスが亡くなると、424年にプラキディアは息子をヴァレンティニアヌス3世としてラヴェンナの西ローマ帝国の皇帝に仕立て上げます。
その後、彼女は450年にローマで亡くなったと言われています。


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これは、現在ブレッシャのキリスト教市立博物館に保存されている、十字架です。中央に描かれている3人が、プラキディア(中央)、息子のヴァレンティニアヌス3世(左)、娘のホノリア(右)です。


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長女ホノリア(右)もまた、波乱万丈な姫なのです。
何故か、弟のヴァレンティニアヌス3世により長い間、誰とも結婚することを禁止させられます。そして449年、彼女が32歳の時に、衛兵の一人、エウジェーニオと恋に落ちます。残念ながらエウジェーニオはヴァレンティニアヌス3世により処刑され、ホノリアは、元老院議員との新たな縁談のために、コンスタンティノープルに送られそうになります。

ここで彼女は、ローマ帝国の宿敵であるフン族のアッティラ王へ、「何とかして自分をラヴェンナから救出して欲しい」という手紙を自分の指輪と共に送ります(宿敵に助けを求めるなんて思い切った行動ですよね)。

ホノリアがアッティラ王に手紙を送ったことを知ったコンスタンチノープルの皇帝テオドシウスは激怒し、彼女をフン族へと引き渡すように命令します。ところが、ラヴェンナの皇帝ヴァレンティニアヌスは、姉のホノリアへ恩赦として、その命令には従わず、自分の部下と結婚をさせます。

こうしてホノリアは何とか平穏な後世を送るのですが、アッティラ王は彼女から届いた手紙は「合法的な要請だ」とし、451年からの2年間、北イタリアを中心に壮絶な略奪を行うのでした。

中世の時代、姫君も色々と大変なんですねえ・・・

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Commented by saeko at 2009-09-12 22:04 x
モザイク画、すごく綺麗ですね!!
いつか生で見てみたいです。
Commented by nixau3 at 2009-09-12 23:07
Chihoさん、はじめまして!mariと申します。
いつも楽しく拝見させていただいていますが、今日はラヴェンナの文字を見て思わず書き込みです。
私はまだイタリアには行ったことはないのですが、行ってみたい所の一つがラヴェンナです!初期キリスト教建築やモザイクなど、教科書で見たものを自分の目で見るのが私の夢です。
ラヴェンナ行きたいな〜。フィレンツェも!
mari
Commented at 2009-09-12 23:31
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by woodstove at 2009-09-13 05:01
Chihoさん こんにちは~。。。
 モザイクがこれほどまでに見事な表現を持って
いるとは知りませんでした。 写真など無い時代ですから
当たり前かもしれませんが、素晴らしい描写力ですね。
現代にいながら恥ずかしいですわ。。。。^^;

 中世のお姫様。。。と言いますが、ボクには強い人
だなあ、と思ってしまいます。 
また、その地位と美貌が、彼女の人生を壮絶なモノに
したのかもしれませんね。あれこれ勝手な想像をふくらませてみました。(お気楽) ^^;
Commented by Cocorarte at 2009-09-13 12:53 x
Chihoさん、初めまして!
ブログランキングからきました。

大学の授業に美術歴史学があってラヴェンナの建築や美術を勉強したのであまりの懐かしさに書き込みせずにはいられませんでした!
フィレンツェはずいぶんと昔に行ったきりなのでまた行きたいです・・

美しい写真とお勉強になる情報が沢山詰まっているブログで素敵ですね♪これからも更新楽しみにしています。がんばってください♪
Commented by fiorentino at 2009-09-13 14:48 x
とても美しいモザイク装飾ですね。
細かくて色使いも綺麗です。
実際に行ってじっくり見てみたくなりました。
Commented by stessa2 at 2009-09-14 18:21
Chihoさん、こんにちは
前回今回とラヴェンナのお話、とても興味深く読ませて頂きました。^^
イタリアへ行ったときに一度は足を伸ばして訪れてみたいと思いつつ
なかなか実行出来ないラヴェンナやボローニャへの日帰り旅行。
こうやって細かく紹介してくださると「よし、行ってみよう!」って、
背中を押された気分です♪
続けてボローニャ編も楽しみにしていますね!
Commented by ★国民健康保険料減額マニュアル at 2009-09-14 20:58 x
モザイク装飾の美しさに感激

イタリアを旅したいな

応援☆
Commented by lacasamia3 at 2009-09-17 23:30
saekoさん>写真だと全然伝わらないのですが、このモザイクはやはり実際に見ると凄くインパクトがあります。いつか是非見に行ってくださいね。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-17 23:30
mariさん>初めまして。そうそう、東ローマ皇帝のモザイクは良く教科書にも載っていますよね。是非、ラヴェンナをいつか訪れてみてください。1500年以上も前のビザンチン文化の名残があちこちに残っていますよ。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-17 23:30
鍵コメtさん>私も楽しみにしています~♪
Commented by lacasamia3 at 2009-09-18 18:16
woodstoveさん>モザイク画は、技法が与えるインパクトと言う面ではフレスコ画以上のものがあるなあと思います。写真がなかった時代、こうしてそれぞれの肖像を残していたんでしょうね。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-18 18:18
cocorarteさん>初めまして。ブログを見てくださって有難うございました。イタリアには本当に見て周って楽しい街が沢山有ります。私も最近、再び美術史への興味が沸き、色々見て周っています。これからもどうぞ宜しくお願いします♪
Commented by lacasamia3 at 2009-09-18 18:19
fiorentinoさん>写真では実際の魅力の10分の1も伝わりません。実際にはキラキラと光るモザイクが本当に美しいんですよ。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-18 18:20
stessaさん>フィレンツェから日帰りで行ける街って結構沢山あるんですよね。1週間の滞在でも足りないくらいです。少しずつそんな街への行きかたや見所をご紹介しますね。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-18 18:21
国民保険さん>いつか是非イタリアにいらしてくださいね。
by lacasamia3 | 2009-09-12 20:54 | フィレンツェから日帰りで行く町 | Comments(16)

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