世界遺産としてのフィレンツェ

ブログを読んでくださっている学生さんから、「世界遺産都市としてのフィレンツェ」について質問をもらいました。自分が住んでいる街について興味を持ってくれる学生さんがいるということは、なんとも嬉しい気持ちです。
私は日本人だし、アントネッロは南イタリア出身で、一緒に市内に住んだことはなく、いつも郊外ばかりなので、なんとも表面的な意見になってしまうと思いますが、13年間フィレンツェという街に関わってきた私の個人的な印象として頂いた質問に答えてみますね。

質問1
「フィレンツェで暮らす中、ここは世界遺産なのだなぁと感じることはありますか?

フィレンツェの中心部は、1982年に世界遺産指定を受けました。
コレを知っているフィレンツェ人は一帯何人居るでしょう?と思うほど、余りフィレンツェ人の自覚はないようです(笑)。フィレンツェの外環道路に近年、市が「世界遺産都市フィレンツェ」というこれまた小さな札を立てたのも、そんな無関心なフィレンツェ人達へのアピールなんでしょうね。
世界遺産指定を受ける前から既に観光都市であったフィレンツェなので、指定を受けてぐんとツーリストの数が増えたというわけでもなさそうです。
19世紀末はイギリス人、戦後はアメリカ人、80年代以降は日本人も含め世界中からのツーリストがフィレンツェを訪れています。
勿論、大切に保存されてきた歴史地区や美術品が残っているからこうして沢山のツーリストがフィレンツェを訪れるわけで、その意味では、世界遺産指定は今後の保存に対する意識向上に一役買っているかなと思います。
次の回答でも触れている建築法や規制の厳しさに直面すると、「世界遺産だからかなあ」と思ったりもしますが、これは世界遺産だからという以前に「トスカーナだから」ということなのかもしれません。

質問2
「世界遺産としてフィレンツェを保存していくにあたって、フィレンツェの住民への負担や規制はあるのでしょうか?」

建物保存に関する厳しい規制は世界遺産指定の前から存在していたようですが、指定後更に厳しくなったようです。特に、フィレンツェの中心部の建物では、外装は勿論、変更不可能で、壁の色から窓枠の色まで細かく指定されています。内装の変更にも許可がなかなか下りないと、アパートのオーナーさんから良く聞きます。
世界遺産指定を受けたフィレンツェの歴史地区だけでなく、トスカーナ地方の多くの市町村でも基本的に、建物の外装を変更することは不可能で、階数を増やしたり、窓を増やしたりすることもできないんです。各市町村の役場には、壁の色や窓枠用の色見本があり、そこから選んだ色しか使ってはいけないという位なんですよ。
トスカーナ地方の建築法の厳しさは、イタリア国内でもかなり有名ですが、それが世界遺産指定でどう変わったか(特に歴史地区の建物に関して)は、どうなんでしょうね。
私の職業柄気づくことといえば、同じ歴史地区にあるアパートでも、建物自体が重要文化財指定になっているアパートは、アパート管理会社を通じて市に「重要文化財に宿泊します」という届出を出すことになっています。

質問3
「毎年多くの観光客がフィレンツェに来ることをどのように感じているのでしょうか?」

殆どのフィレンツェ人が何らかの形で観光に関連づいた仕事をしている為、多くの観光客が訪れてくれることは、歓迎されていると思います。ただ、ゴミ問題はかなり深刻で、やはり観光客が集中する中心部では、ゴミ箱が山盛りになっています。団体ツアーですと、中心部に入る直前に、チケットと呼ばれる税金をグループごとに支払っているようです。こうして集められた税金はゴミの処理や、街の清掃にあてられているそうです。
まあ、ダンテの時代から何かと文句が多いフィレンツェ人なので(笑)、たまに自転車に乗ったシニョーラが、団体客に阻まれて文句を言っていますが・・・。

余談ですが、フィレンツェを訪れる観光客の平均滞在日数は4泊だそうです。良く観察してみると、団体ツアーの観光客は国籍に関係なく、小さな町フィレンツェのほんの中心部(ドゥオーモとアカデミア美術館とシニョリーア広場の間)でしか見かけません。個人的には、フィレンツェの美しい教会や美術館、田園風景をもっとゆっくりと、幅広く楽しんで欲しいなあと思います。

話がそれましたが、「世界遺産都市」という観点からすると、もともと文化保存に力を入れていたフィレンツェは例外かもしれません。
調べてみると、イタリアには世界遺産指定されている場所は40箇所もあるんんですねえ。その中には、世界遺産指定をされたから保存意識が高まったというところも沢山あるようです。

長々と、あまり的を得た答えにはならずごめんなさいっ!
Tさん、お勉強頑張ってくださいね。

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Commented by がっちゃん at 2007-12-12 09:17 x
世界遺産について、本当に詳しいご説明ありがとうございました。
今ようやく京都でも今までの景観条例だけじゃなく、一段と厳しくした規制を設けようとしています。観測点を設けて、そこから例えば視線の範囲内に入るものに関しては撤去も辞さない(つまり今までは看板の色を抑える。と言う程度だったのが、その看板ごと撤去する方向)と言う強い方針を打ち出しました。
それでも、フィレンツェの景観などに比べると、もう段違いです。
まずエアコンの室外機が表にないし、看板類が極端に少ないと思います。あと高さもそろってますよね。ミケランジェロ広場から見える一番高い建物はドォーモって感じで。この景観を維持していくには並大抵の苦労ではないだろうといっつも思っています。
それについての詳しい説明を頂いたので、本当にためになりました。
ありがとうございました。
Commented by Tomoko at 2007-12-12 12:29 x
本当にこの度はどうもありがとうございました。
丁寧に詳しく答えていただいてとても勉強になりました!
いつも観光客として行くばかりなので、逆の目線からのお話は新鮮に感じました。やはり様々な規制であったり、努力はあるのですね。
フィレンツェの歴史等もっとよく勉強して、知識を深めていきたいと改めて思いました。
来春にも、またフィレンツェを訪れる機会で出来そうなので、そのときには是非もう少し外にも目を向けて、幅広くフィレンツェを楽しみたいと思います。色々な新しい発見がありそうですね。
本当にご親切にありがとうがざいました。
Commented by chiho at 2007-12-12 22:44 x
がっちゃんさん>そうですねえ。京都とフィレンツェを比べると、景観に関する規制についてはフィレンツェのほうが大分厳しいかなあと感じます。うんうん、建物の高さという意味でも、やっぱり中心部で一番高いのは、ドゥオーもかなあという気がします(町の外側にあるカレッジという市民病院が唯一高い建物なんですよ)。
Commented by chiho at 2007-12-12 22:46 x
Tomokoさん>いえいえ、こちらこそ質問していただいて有難うございました。いつかフィレンツェを訪れられた際には、是非、「フィレンツェ都市史博物館」にも足を運んでみてください。フィレンツェの街がいかに変化したか、いかに変化しなかったか(笑)が良く判りますよ。
by lacasamia3 | 2007-12-11 23:49 | フィレンツェという町 | Comments(4)

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