古小麦と手打ちパスタ

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イタリアで最近よく聞く、grano antico(グラーノアンティーコ)の良い訳がないものか?と考え中。 古代小麦って訳してしまうと、「古代=メソポタミア時代に遡る」みたいなイメージで誤解されてしまうし・・・。ファッロと呼ばれるスペルト小麦とは違います。「古小麦」とでも呼んでみようかな?

今、市場に出回っている小麦の殆どはホモ接合体と呼ばれ、遺伝子がほぼ全て同一です。例えば世界的なシェアを占めるはF1は、収穫した小麦を翌年撒いても小麦にならないので、農家は毎回種子を業者から購入する必要があります。

それに対して、グラーノ・アンティーコ(古小麦)はエテロ接合体なので、育つ地域の気候条件に遺伝子が適合します。1950年以前に交配によって作られた種類の小麦や昔からその地域に植えられてきた種類の小麦がこの分類にあたります。古小麦の種類は地域によって細かく種類が分かれ、更にそれぞれの風土に合わせて変化していきます。収穫した小麦を残しておいて、次の種まきの時に使うことができるので、業者から毎回種子を購入する必要はありません。地表の乾燥に弱いので雑草を好み、F1と違って、除草剤を撒く必要がありません。有機栽培に適した種類なのです。

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(水車小屋の中でも小麦が生まれました・笑。こっそり水やりして育ててみようと思います)

トスカーナで古小麦と呼ばれる種類は、主に、ヴェルナ、シエーヴェ、ジェンティルロッソ、アンドリオーロなどがあります。農家によっては、更にこれらを独自のミックスにして、数種類を一緒に混ぜて撒くことで、違いに助け合い、栄養のバランスが更に取れた小麦粉になるというポポラツィオーネと呼ばれる農法を実践しているところもあります。



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(先日、シルヴィアとボローニャの農家から購入してきたテルミニッロという種類の小麦。水車小屋で挽いて、パスタにしてみました)

水車小屋では、古小麦は石臼挽き、そしてふるいも一度だけかけ、半全粒粉の状態で仕上げています。
イタリアでは最近、スーパーのパン売り場でも、「古小麦を石臼挽きにした小麦で作ったパン」が売られ始め、値段は高いのに、売れているようです。それでも、

・石臼挽きの場合、回転が遅いので、大量に生産できない(だから栄養価が逃げずに良質の小麦粉になります)
・有機栽培だから生産量が少ない
・古小麦なので、発酵が難しく、安定したパンにしにくい

・・・と大量生産出来ない条件がバッチリ揃い(笑)、地元の小さなパン屋さんや、パン職人だけの小さな市場が生まれつつあります。

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これから「古小麦」を巡る環境がどのように変化していくのか?なかなか興味深いもの。
有機栽培の古小麦が通常の小麦に比べて倍以上の値段がつくので、トスカーナでも古小麦を有機で栽培する農家がかなり増えてきました。これを機会に、有機農家が増えることはとても良いことです。

明日は、貯水池に重機を入れて、泥をかき出します。
綺麗になったら、来週はどの位粉挽きができるかな?ワクワク♩


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奥村 千穂/イカロス出版

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Commented by えん at 2019-03-04 00:25 x
小麦に詳しいわけではありませんが、F1のような遺伝的に操作された栽培品種に対して、それ以前の普通に交配可能な品種のことを指す言葉として良く使われるのは「在来種」、「在来品種」だと思います。
ですのでこの場合は「在来小麦」と言う呼び方もあるかなと思いました。
Commented by lacasamia3 at 2019-03-04 03:34
えんさん、きっと意味としては「在来小麦」という呼び方はピッタリきますね。ありがとうございます。既に外来種が入ってきてから50年以上が経って殆ど外来種が占める現在、その更に前に作られていた種類の小麦を在来と呼ぶほど身近なものではなくなってしまったのが現状で、でもやっぱり「在来小麦」小麦なのでしょね。
Commented by kotaro_koyama at 2019-03-04 16:42
F1との違い、勉強になりました。Grano anticoの訳、僕個人的には「古代」が好きですね。まさにメソポタミア時代から脈脈と引き継がれてきた、みたいなイメージがあって... 正しい意味的には在来種なんしょうが。
Commented by shiz at 2019-03-04 17:38 x
時々読ませていただいては、とてもうらやましく思っています。水車小屋での作業、パンの作り方など私の憧れの姿なのです。酵母こそ庭の葡萄など自然の力をいただいて起こし、パンを焼いてはいますが、ここで拝見するような小麦にはまだ出会えませんので。
小麦の名前ですが、私の単純な頭で、昔小麦、では?と浮かびましたが合わないでしょうか。古代よりは近いかなと。
私も畑を借りて野菜を作っていた時は在来種の種を手に入れ、できるだけ採種して繋げていました。それが本来の姿だと思っています。
Commented by lacasamia3 at 2019-03-06 06:08
kotaro_koyamaさん、グラーノ・アンティーコって言葉は、ここ2年ほどでよく聞かれる様になりましたよね。ウンブリア州にはとても良い生産者さんが沢山いるんですよ。「古代小麦」って夢のある言葉だから、それに似た言葉を探したいんだけど、ぴったり当てはまる言葉がないんですよね。
Commented by lacasamia3 at 2019-03-06 06:46
shizさん、お庭の葡萄でおこした酵母、きっと良い香りなんでしょうね。パン焼き、楽しいですね~。イタリアでは地方によってそれぞれ良質の小麦粉が手に入るので、色々試しています
Commented by shiz at 2019-03-06 14:51 x
読んでいただけてうれしいです。
酵母は、初めこそ香り豊かですが、一昨年は元種少しを冷蔵庫に残してはつなぎ、を一年繰り返していましたので、何から起こしたかはわからなくなります。柑橘系でもリンゴでもとても良い香りの酵母が出来ますし、極端に言えば酵母に起きてもらうのには野菜果物穀類などかなりのものが可能だと思います(多少向き不向きがあるかも、酵素の強すぎるキウイ、パイナップルなどは不明)。リンゴは食べる時、芯と皮を残すのでそれを使って、という具合です。玄米を炊く前に発芽させますが、その浸し水も酵母が元気に起きているのがわかります。
ですから、そちらの酵母にもとても興味があります。余計な話ですみません。
Commented by africaj at 2019-03-10 01:11
こぼれた小麦が、敷石の隙間から芽を出したの?
やはり種には強い生命力が宿っているね。
本来そのくらい強いものなのに、一世代で終わるように遺伝子操作で歪める発想が下品よね。でも、まさかと思うほどに種ビジネスは世界を牛耳り始めてる。イタリア人の食べ物に関する心意気は感心するなあ。
by lacasamia3 | 2019-03-03 21:54 | 水車小屋物語 | Comments(8)

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