婚姻飛行

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昨日からフィレンツェはグンと気温が上がりました。
我が家の庭でも、ひなげしがポツポツ咲き始めました。この暑さで蜂達も更に活動が活発になっています。
いつもより羽音がかなり激しくブンブン聞こえるので、何事かと外に出てみたら・・・
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蜂達が群れをなして飛んでいます。
これは、volo nuziale (直訳すると「婚姻飛行」)。
数日前に産まれた新しい女王蜂が誕生したおめでたい印です。
先日、アントネッロは3年経って年を取ってしまった女王蜂を殺しました。これは養蜂にとってとても大切な作業です。女王蜂は3年以上立つと、卵を産まなくなってしまいます。このままにしておくと、働き蜂たちは新たな女王を育て上げ、古い女王をもとの巣に残したまま、大部分の働き蜂達は新しい女王とともに新たな巣を探して飛び去ってしまうのです。養蜂家としては、こうして蜂に逃げられてしまう事を避けなくては行けません。一方、古い女王蜂が死んでしまった場合には、新しい女王を選出しても、集団は同じ巣に居続けるのです。

働き蜂達は、女王蜂が老いてくると、新たな女王蜂を作るべく「王座」と呼ばれる不思議な形をした特別な巣を巣の中に数個作ります。そこに古い女王蜂が卵を産みつけ、王座の卵には、働き蜂達は普通の蜜ではなくロイヤルゼリーを運ぶのです。こうして新しい女王蜂が産まれます。
王座に卵が産みつけられたタイミングで、アントネッロは老いた女王蜂を取り除きます。
そして、新しい女王蜂が1匹産まれると、まずはその新女王は、他に数個ある王座から出てくる女王蜂達を次々と殺します。
そして、天気が良く風がない日の昼間、一番気温が高い時間に、働き蜂、雄の蜂達を引き連れて、「婚姻飛行」をするのです。

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働き蜂達はただ単に、やいのやいの集っているだけですが(笑)、女王蜂はこの飛行中に雄の蜂達と交尾します。彼女にとっては、これが3年間の寿命の中で唯一の飛行となります。ちなみに、働き蜂は全て雌です。雄が役に立つのはこの日だけ。後は何にもしません(笑)
この後、またすぐに皆、巣箱に戻り、女王蜂はこの時の体内の精子を少しずつ使いながら、2年間半、卵を産み続けるのです。1シーズンで30万個の卵を産むので、一生で100万個近い卵を産み続けます。

春の婚姻飛行の羽音は、何ともロマンチックな音に聞こえます。
祝 新女王誕生!

   
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Commented by mory_and_meg at 2014-05-22 20:27
ミツバチのことについて、じっくり読まさせていただきました。

へぇーっと、いろいろ勉強になります。
ありがとうございます!

Commented by tomomato at 2014-05-22 21:32
この蜂のダンスはすごいですよね。  一度、 新しい女王バチがでて、 葡萄棚に一斉に働き蜂とともに集まっているのを見たことがありましたが、自然の神秘に本当に圧倒されました。   でも、一度の後尾で3年近く卵を産み続けることは知りませんでした。 すごい。美味しいハチミツが、その結果だと思うと、 一滴も無駄に出来ませんよね。  
Commented by dancingcats at 2014-05-22 22:10 x
初めて知りました…蜂の世界。
ドラマチックな自然の営みですね。
感動…
Commented by tekkoku-ya at 2014-05-22 22:23
深い・・・ですね~。
凄い!
Commented by la_mia_coccolina at 2014-05-23 01:31
ミツバチの世界はとても神秘的でドラマチックなのですね。
初めて知る事ばかりで驚きと感動で、胸にぐっとくるものがありました。
自然の摂理に基づいてミツバチたちは坦々とそれぞれの役割を果たし続けていることを思うと、その健気さや自然の厳しさに心打たれます。
たった一度の婚姻飛行。。。何ともロマンチックで切ない気持ちになってしまうなぁ。
こういうお話を知っていて口にするハチミツは、今までと違った味になりそうです˘◡˘
Commented by wocean2 at 2014-05-23 01:44 x
オットくんも、コテージに住むようになったら養蜂してみたいと言っているのですが、奥が深い!!
自然といい、生き物といい、本当に面白いですね~
Commented by fuuku at 2014-05-23 12:17 x
目から鱗がボロボロ落ちました。特に女王蜂が3年間で1度しか飛ばないあなんて!ミツバチがなが~自然の営みのなかで生み出した仕組みなのでしょうが、女王も大変だわ、と思うばかりです
Commented by paprica at 2014-05-23 13:54 x
ミツバチの生態は本当に奥が深くロマンがあります。
実は1ヶ月ほど前に相方が見たんですよ。この「Swarming Bees」。てっきり私たちは「ハチが怒っている」と思ったんですけど、あれは恐らく婚姻飛行だったのでしょうね。花びらが舞うように、ものすごい量のミツバチたちがブンブンと集団になって飛び回ってたんです。
ところで女王蜂って、ちゃんと飛べるんですね…当たり前か。
Commented by gantou at 2014-05-23 23:51
素晴らしい蜜蜂の世界! 初めて知りました。 女王蜂は世帯交代があり、アントネッロが進行をマネージメントするのは、とても新鮮で愕きです。千穂さんのブログはイタリア芸術から、食の世界、そして蜜蜂の世界と楽しみにして居ます。
Commented by 風琴 at 2014-05-23 23:59 x
詳細レポありがとうございます!
イヤ~知りませんでした・・・・
女王蜂のこと、これ人間界でやったら逮捕ですよね(笑) 姨捨山になっちゃいます。
働き蜂はみんな雌とは!!
今 知ったという事実にもショック!
やっぱり雌は偉いなあ・・・ってそこっ!
イヤ~ためになりました・・・感謝 感謝です♪
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:31
mory_and_megさん、昆虫の常識って、人間とも動物ともまた違って、とても面白いです。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:32
tomomatoさん、養蜂って、本当に奥が深いです。集団の行動をいかに統制するか、時には蜂の気持ちになったり。そして、小さな蜂達が大量の蜂蜜を集める事に感動します。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:34
dancingcatsさん、蜂の本能ってとても面白いんですよ。彼らの存在意義は、集団の存続に尽きる訳で。この蜂の規則正しい集団行動をイタリア人はちょっと学ぶべきだと思う(笑)
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:35
tekkoku-yaさん、アントネッロが養蜂をやり始めてから、私もドップリ蜂の世界に浸かっています。面白いですよ。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:40
la_mia_coccolinaさん、蜂って羽があって自由に飛べるので、逃げられてしまうと大変なのです。巣に丁度良い数をキープする事、健康な女王を常に継続して保つ事が大事なんですって。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:41
wocean2 さん、カナダだと熊が来ちゃうかな? でも是非是非、楽しいですよ。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:43
fuukuさん、女王蜂って卵を産む為に、胴がとても長いんです。それにしても100万個って凄い数ですよね。それぞれの働き蜂の寿命が春夏は3ヶ月だから、産み続けないと集団が絶滅してしまうのです。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:44
papricaさん、そう、女王蜂も飛べるんです。でも婚姻飛行が終わったらその後は飛び立たないのは、集団のため。彼女の役目は卵を産む事だから。凄い一生ですよね。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:45
gantouさん、養蜂家が女王のコンディションをコントロールしないと、蜂達はいつか飛び去ってしまうのです。なかなか面白い仕組みです。
Commented by lacasamia3 at 2014-05-24 00:47
風琴さん、昆虫の本能って凄いです。万が一、女王の死期が近いと、それを察知して、新女王を作り出すという生態もまた凄いです。
Commented by marco at 2014-05-26 07:57 x
はじめまして。
いつもお山のお話楽しく読ませていただいてます。

ミツバチのお話を読んでいたら数日前たまたま再放送でミツバチマーヤを見た時にまさに、女王が産まれて婚姻飛行に旅立つってお話でした!

小さい頃はなんの気も無くかわいいマーヤの冒険を見ていたけれど、ちゃんと一つ一つが深いエピソードに基づいて書かれてたんだ〜っと感心しちゃいました。

アントネッロさんも蜂さんも美味しいハチミツ作りがんばってくださいね〜♪
Commented by Puki at 2014-05-26 17:43 x
とても面白かったです。女王、王座、婚姻飛行―ロマンティックな用語が効いています。ハチ好きの夫に教えてあげようとウズウズしています(笑)。
by lacasamia3 | 2014-05-22 18:50 | ミツバチの羽音 | Comments(22)

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