読書の秋~"Il Diremma dell' onnivolo"

読書の秋~\"Il Diremma dell\' onnivolo\"_f0106597_1185913.jpg昨日から今日のお昼頃までは、気持ちの良い秋晴れのトスカーナでした。
ところが、今日の午後からは大雨です。今朝、人参と赤ラディッシュ、ビーツの種を蒔いておいて良かった!種は雨で流されないように、上から不織布を被せておきました。
こんな雨の日曜日は、のんびりと読書。私が読書をするのは、バスを待っている時間、毎日夜寝る前、そして日曜日の午後です。今、読んでいるのは、Michael Pollan著"Il Diremma dell' onnivolo"。英語の原題は"Omnivore's Dilemma- A Natural History of Four Meals" です。残念ながらこの本は日本語には訳されていないようですが、彼の他の著書はいくつか訳されているようです。


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ノンフィクションで、現代人の食生活、食産業と農業に関わる大企業のつながりを鋭く突いています。こう書くと堅いテーマのように聞こえますが、著者のウィットに富んだ読みやすい文体が良いリズムを与えてくれ、とても興味深く読んでいます。私は、まだ第一章を読んでいる途中ですが、トウモロコシ、牧草、森と狩りという3章のテーマに分かれています。
アメリカの食生活を言及する本ではありますが、イタリアの現代の食生活や農業にも通じる部分があります。一見すると健康そうにみえるイタリアの食生活も、たまに行くスーパーで周りの人の買い物を観察していると随分と変わってきたのだなあと感じさせられます。私たちの親の世代の年齢の人が、大きなコカコーラをまとめ買いしていたり、子連れのお母さんが冷凍食品を沢山買い込んでいたり・・・。まだ一般的には食に対する意識がかなり高く、毎日の食事を自分で調理をするということが日常的なイタリアではありますが、これからの世代が果たしてずっとこの食への意識を保っていけるか?と考えると、それは確かとはいえません。また、トスカーナでもオーガニックに対する一般的な意識はまだまだ低いと思います。

トウモロコシがいかに私たちの日常生活に使われているのか、この本を読むと良く判ります。
野菜として消費される量はほんの僅かで、実は、甘味料、発酵剤、スナック菓子の原料として食品に混ぜられたり、プラスチックの替わりに使われています。それ自体はそれ程害がないように見えますが、実際は余りに世界的な消費量が多いため、トウモロコシの単一栽培が凄いスピードで増えているのです。かろうじて大豆との転作をするくらいで、かなり集中した栽培が行われるため、そこには大量の化学肥料と殺虫剤が散布されます。

農業と言う面から見ると、今の遺伝子変換をされたトウモロコシは、収穫後、翌年同じトウモロコシを蒔いても発芽しないように操作されています。従って、農家は毎年、蒔くためのトウモロコシを企業から買わなくてはいけないのです。そして、同じ企業が農家からトウモロコシを買い上げます。「この新しい種は値段が高いけれど、収穫量は10%アップする」という宣伝に釣られて、新たな種を購入すると、10%の収穫率が上がるものの、その分、買い上げられる値段が下がってしまうという悪循環が発生するのです。
結局、農家は儲からず、利益は大企業にのみ発生します。
世界の穀物庫と言われるアメリカのアイオワ州では、余りにトウモロコシと大豆の単一栽培が進んでしまったため、州で消費する食料の80%は他の州から運んできているそうです。

自分で小さな畑をやっていると判るのですが、同じ種類の野菜を同じ場所で長く栽培してしまうと、常に同じ栄養素が土壌に不足してしまいます。それを化学肥料で補い続けると、土自体が死んでしまうのです。

今までなんとなく知っていたことを、クリアにしてくれる本です。

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Commented by miaousagi at 2009-09-21 03:41
はじめまして!
いつも楽しく拝見しています。
わたしも読書だいすきで、夜眠るまえベッドの中で読んでいます。
フランス語の本をよまなくちゃーと思いつつ
ついつい日本語の本に手が出てしまうという
こころよわさなんですけどね(苦笑)
わたしも庭でちいさな家庭菜園をしています。
なのでchihoさんの畑レポート、いつもうんうん!って
思いながらよんでいます。
じぶんですこしでも野菜やくだものを育てると
売っているものに対しても興味をもてて
きちんとした目で判断するきっかけになっていいですね!
これからも更新、たのしみにしていますね♪
Commented by ひろりん at 2009-09-21 07:30 x
Chihoさん、お久しぶりです。今、日本に来ているのですが、いろんなテレビ番組で、家庭菜園、脱サラして農家を始めた人たち、自然農法などに関する物が多くてびっくりしました。あまりにも変わりすぎてしまった農業を見直す、自分で作った農作物の味の良さ、安全性などが見直されるようになったのでしょうね。前に、豆腐を作っている工場で、大豆が作られなくなってきているので、材料確保が難しくなっているとか、というのも聞いたことがあります。代替エネルギーの原料になるとうもろこし(?)の方が収入が増えるので、アメリカでは、大豆を作るのをやめてとうもろこしに変えてしまった農家が増えていると言う話でした。日本の基本的食材にもなっている、お豆腐もそのうち姿が変わってしまうか、なくなってしまう恐れもあるということなんですね。それだけ、食というのは、私たちには重要なモノということですね。
Commented by woodstove at 2009-09-21 07:58
Chihoさん こんにちは~。。。
 その手の本に似たものに「危ない食卓」だったか「食卓が危ない」の
どちらかに、食に対する危険を著した本がありました。
図書館で借りて読んだものでしたが、ショッキングな内容満載で
安全な食生活って大変なんだなあ と思ったものでした。
 ボクも家庭菜園を通じて食を考えるようになりました。。。。。
完全に自給自足には至りませんが、少しだけでも考える時間が
持てたことに意味があると感じております。
Commented by kapibara at 2009-09-21 22:07 x
CHIHOさん、イタリア語で読書というのが、とっても羨ましい!!
以前、duomoの近くの本屋さんで、イタリア語に翻訳された吉本ばななさんの、たたみという本を買い、実際に日本のものと交互に読み、勉強しようと思いましたが、遅々として進まず・・・・。又、トライしてみるつもりです(+_+)
今は、憧れの須賀敦子さんの全集に没頭していますが、その中で、イタリア語と関西弁が似ている、と書かれてあり感激しました(;_;)
私自身、イタリア語の響き、イントネーションがとっても大好きで、勝手に
大阪弁に似ている!と、親近感を持っていたのです。
大阪弁は、ペラペラなのになぁ・・・(^^ゞ
Commented by kotaro_koyama at 2009-09-22 17:42
Chihoさんこんにちは。福岡正信の「わら一本の革命」ってお読みになったことありますか?先日有機農業絡みの仕事でイタリア人の農家とお話をしたら、突然Fukuokaの名前が。この本はイタリア人有機農家の間では古典バイブルだと聞いてびっくり。日本よりも有名なくらいだそうです。僕もたまたまこの夏に読んだのですが、いいですよ。福岡氏の哲学、きっとChihoさんも共鳴されるのではと思います。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-24 03:09
miaousagiさん>こんにちは。私もアントネッロも、寝る前に5分でも本を読まないと眠れないんです~。でもたまにアントネッロは本を開いて持ったまま寝ていますが(苦笑)。9月半ばに入って、遅ればせながら秋野菜の種を猛ピッチで蒔いています。枯葉も集めてコンポストにしなくては・・・。9月の畑は忙しいです~。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-24 03:14
ひろりんさん>アメリカ産のトウモロコシの60%は家畜の餌になっているそうです。そして残りは、ケチャップやお菓子などに使われる甘味料、ビール、スナック菓子、コカコーラ、プラスチックなどの原料になっているんです。勿論、オーガニックであるわけはなく、大量の石油系化学肥料と農薬、そして遺伝子組み換えをした種が使われているのです。アメリカのこととはいえ、きっと地球規模で行われているんでしょうね。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-24 03:17
woodstoveさん>この本は、アメリカのコーンベルトと呼ばれる広大な農耕地区で生産されるトウモロコシがどのように育てられ、どこに使われるのかを追っています。食料生産の危機を訴えるというよりも、理論的にシステムを判りやすく説明し、読者に考えさせるという感じの本です。語り口も面白くて、日本語に訳されていないのが残念!
Commented by lacasamia3 at 2009-09-24 03:19
kapobaraさん>イタリア語と大阪弁、確かにイントネーションとかリズム感が似ているのかもしれませんね(笑)。吉本ばななはイタリアでもとっても人気があるんですよ。新刊が出ると必ず店頭に並べられています。
Commented by lacasamia3 at 2009-09-24 03:21
kotaro_koyamaさん>聞いたことがあります。私はその方の日本の著書名は知らなかったのですが、Metodo Fukuokaとして、どの有機農業の本にも紹介されていますよね。確か雑草を抜かずに野菜の苗と一緒に育てるという農法だったと思います。へえ~、福岡さんの本、読んでみたいなあ。
Commented by やまね at 2009-09-25 06:23 x
イタリアでもジャンクフードの波がおとずれていること、なんだか意外と思いつつ興味深かったです。
とうもろこしの単一栽培、確かに怖いです。北海道の一面のジャガイモを見て以前はキレイと思ったのですが、自分で堆肥をまいて畑を耕すようになってからは、これだけの面積に対しどれだけ薬をまいているのかしら、と思うようになりました。種の問題も一筋縄ではいかないですよね、F1種を買わないようにしているのですが、発育がイマイチ(笑)
chihoさんの本レポート、おもしろかったです。
次のレポートを楽しみにしています!
Commented by lacasamia3 at 2009-09-25 21:15
やまねさん>広大に広がる田んぼとか、とうもろこしの畑、ジャガイモ畑って、一見すると=自然というイメージですが、薬の散布量、化学肥料の使用量によっては都心のビル街以上に危ない環境なんですよね。私たちがいかにイメージに頼りすぎて本質が見えていないかって思い知らされる本です。今は畜産の章で、著者が1頭の肉牛の成長を追う部分です。シリアスなテーマだけれど、ユーモアも交えてあって面白く読めますよ。
by lacasamia3 | 2009-09-21 01:45 | シンプルエコライフ | Comments(12)

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